「新聞は、言葉の妙を結集させた文
章という内面と、薄く粗い紙という
素朴な外面を併せ持つ愛すべき存在
である」。記者にとってこんなにう
れしい読者の言葉はそうない。まし
てや、あまり新聞を読まないとされる高校
生の声ならなおさらだ◆新聞を題材にエッ
セーを書いたのは、姫路西高校1年の百瀬
泉里(せんり)さん。館長の名を冠した姫路文学館の
「第9回藤原正彦エッセイコンクール」で
高校生部門の最優秀賞に輝いた◆エッセー
では「紙の少しざらりとした手触り」「新
たな視点や価値観を得られる社会面」など
と魅力を挙げ、ネット空間や現実世界から
離れ、静かで穏やかな言葉の海に溺れられ
る新聞に癒されている、と結ぶ◆表彰式
で藤原正彦館長は「言葉の感覚がいい。評
論家になれそうだ。将来が楽しみ」と講評
した◆ぜひ会って話したくなり、学校を訪
ねた。百瀬さんは「ネット見ると、興味
に合わせたニュースが出てくる。楽しいけ
れど、私はいろんな記事や知らないことを
読みたい」と人なつっこく笑う◆「裏付け
を持つ、事実である情報を得たい。記者が
責任をもって書く、顔の見える記事を」。
期待とエールに、身が引き締まる。思いに
応えられる新聞であり続けたい。彼女がお
ばあちゃんになるころまでも。 2024・2・12