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神戸新聞、コラム正平調書き写し

阪神は今年もやれるか。オリックス
のエースは誰なのか。三寒四温
で春が近づく3月。プロ野球も29日
の開幕に向けてオープン戦が続き、
ファンの期待も膨らむ◆シーズンオ
フに発注したグラブをキャンプで使ってみ
た選手から、新たな注文がメーカーに届く
時期でもある。宍粟市の山あいにたたずむ
ミズノテクニクス波賀工場も、毎年1~3
月ごろに生産のピークを迎える◆守備の名
手をたたえるゴールデン・グラブ賞に輝い
た阪神の大山悠輔選手、広島の菊池涼介選
手らが使うグラブもここで作る。「グラブ
マイスター」として職人集団の頂点に立つ
岸本耕作さんは、イチローさんのグラブも
手がけた◆不便な立地に思えるが、中国道
に比較的近い上、革の産地である姫路、た
つの市に接するなど利点も多いという◆ミ
シンやプレス機などの音が響く工場内は、
工程ごとに分かれている。細かい注文用紙
に沿って茶色や赤、黄色など色とりどりの
革を機械で切断し、縫い合わせ、ひもを通
す◆「(グラブが)へたれてくると『顔』
が悪くなってくる。『顔』のバランスがす
ごく大事」。工場を訪ねたイチローさんの
言葉だ。素手に近い感覚で。一部を動かな
くして。選手の独特な感性に応えミリ単位
で整える技がプレーを支える。2024・3・10