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神戸新聞、コラム正平調書き写し

ブリ、タラ、甘エビに越前ガニ。格
別なのは雌のこうばくガニで、地元
に行かねば味わえない。「北陸時の
冬」という一遍で、好物を書き連ね
ていくのは文芸評論家の山本健吉さ
ん。母の里が金沢だった◆「北陸の冬は雪
景色もさることながら、おいしいものが集
中的に現れる季節である」。職は北陸にあ
り。それを象徴するのが各地の市だった。
能登半島の地震で焼けた輪島の朝市もその一
つ◆「こうてくだ、こうてくだ。ぶりと
かにと たこと いか/とれたてやぞ」。
おばちゃんたちの声とおしゃべりが飛び交
う光景を描いた絵本「あさいち」(福温館
書店)が今月、復刊された◆「こぬかいわ
しどうねー」。新鮮な魚に干物、塩やぬか
に漬けた食材が並ぶ。「ほんとの じねん
じょやぞ」。山の幸に畑で採れた野菜も。
水彩の絵を見ていると、にぎやかなやりと
りが聞こえてきそう◆明日23日、金沢市で
「出張輪島朝市」が始まる。営業するのは
まだ一部だが、「輪島での復活まで朝市の
灯を消さない」との決意が伝えられる。最
初の一歩、でも大きな一歩◆絵本が描かれ
た1970年代、市場は社交場で、地元の
人は「市の風に当たりに行く」と言って出
かけたとか。ボランティアに観光に。能登
の風に当たりに行きませんか。2024・3・22