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神戸新聞、コラム正平調書き写し

プロ野球阪神のファンとして思い浮
かぶ一人に、西脇市出身の大島みち
子さんがいる。「もうこの手紙がつ
く頃には、阪神の優勝が決(きま)っている
でしょう」。恋人にあて、そうつづ
っている◆病のため21歳で生涯を閉じた大
島さんが病床で恋人と交わした書簡集「愛
と死を見つめて」はその後、映画にもなっ
た。「阪神優勝」や「バンザイ」の記述が
みられるのは1962(昭和37)年の秋で
ある◆その年、一人で27勝をあげて優勝に
貢献し、完封で胴上げ投手にもなった「小
山正明」の名を、彼女は胸に刻んだかもし
れない。通算320勝の大投手、小山さん
の訃報に接し、久しぶりに書簡集を手にと
った◆小山さんにとってもあのリーグ優勝
は最も記憶に残ると以前、生まれ育った明
石市での講演で語っている。胴上げに観客
が乱入し「帽子からグラブまで全部取られ
た」。昔から阪神ファンはいろいろいたら
しい◆抜群のコントロールと球威で、相手
打者は三振か振り遅れのフライばかり。自
分の守るショートには球が飛んで来ず「小
山が投げる日は商売あがったり」とは、今
年2月に亡くなった吉田義男さんの回想で
ある◆よっさんも、小山さんもー。きのう
甲子園であった伝統の一戦を、寂しく見つ
めた往年のファンも多かろう。2025・4・26