昭和の高度成長期、中学を卒業
した「金の卵」たちが就職のため各
地から都市部へと向かった。記録に
よると、どの生徒もかばんに中学の
卒業文集と寄せ書きを入れていたと
いう東京五輪を前に大ヒットしたこの曲
のタイトルも、きっと文集や寄せ書きにあ
っただろう。「いつでも夢を」。親しみや
すいメロディーに乗り、孤独や悲しみにそ
っと寄り添う歌詞が心に広がる◆♪星より
ひそかに 雨よりやさしくーと歌い出すの
は当時19歳の橋幸夫さん、やがて吉永小百
合さんが加わり、若者らしい誠実な歌声で
「いつでも夢を」と聞き手の背中を押す。
まさに、国民的ヒット曲◆2人とも多忙で
歌は別々に収録、年末のレコード大賞で初
めて一緒に歌ったそうだ。先週届いた橋さ
んの訃報に、吉永さんはこうコメントを寄
せた。「2人で歌った『いつでも夢を』は
私の宝物です」◆「御三家」の一人でもあ
る橋さんは17歳の時に「潮来笠」(いたこがさ)でデビュ
ーするや、4年間で50曲以上のシングルを
出す超売れっ子歌手に。股旅ものにロック
調、しっとりとした恋の歌。なんでも歌い
こなす昭和歌謡の伝道師だった◆人気絶頂
の頃「人としての清潔さを心がけたい」と
語っている。享年82。誠実さと清潔さをま
とい続けた大スターが逝った。2025・9・10