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神戸新聞、コラム正平調書き写し

栗山英樹さんが日本ハムファイター
ズの監督時代、大谷翔平選手を「1
番・投手」で起用したことがある。
さすがの二刀流も度肝を抜かれたら
しい。「ホームランを狙って、空振
りしてきます」。そういって打席へ向かっ
たら◆初球をいきなりホームラン。1番・
投手の先頭打者本塁打はもちろん日本初だ
った。予想を上回る指揮官のアイデアが若
き野球選手のわくわく感を引き出したのだ
ろう◆大谷選手のエピソードはどれも人間
離れしているが、ここまで極端なストーリ
ーは漫画でも描けまい。大リーグ・ドジャ
ースでシーズン50本塁打、50盗塁の「50-
50」を達成したきのうの活躍は、離れ業だ
った◆6打数6安打10打点、3打席連続ホ
ームラン2盗塁ー。長打で三塁を狙いアウ
トになったシーンで送球が少しでもそれて
いたら、1試合で単打、二塁打、三塁打、
本塁打を全て放つサイクル安打も実現して
いた◆ハンマー投げの金メダリスト、室伏
広治さんの言葉より。「水の下に行けば水
圧でプレッシャーを感じるし、水の上に行
けば浮輪みたいに浮くし。自分次第ですよ
ね」◆昨夜、盛り場では「フィフティ、フ
ィフティに乾杯!」の声があちこちで上が
っただろう。野球ファンでなくても虜(とりこ)にし
てしまう「水上の人」である。 2024・9・21