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神戸新聞、オピニオン発言欄

!!終戦特集!! 8月17日投稿文
子供の頃の戦争体験談や暮らしぶり等を後世に伝える企画
タイトル ◆ 祖母の陰膳がよみがえる  ◆
 塩谷 和子 88歳(無職 三田市)
 
 昭和10年生まれの私は、
戦争を体験した年代です。
母には弟(叔父)がいて、
両親(祖父母)とともに町
方に住んでいました。息子
の大学卒業を目前に、多く
の夢を託した幸せな一時期
がありました。大手企業に
就職した大切な息子の元に
容赦のない召集令状が届き
ました。
 一転して「軍国の母」に
なった祖母は、年中4時起
床、武運を祈る氏神参りを
始めました。毎食の卓上に
飾った写真には家族と同じ
ものを「陰膳」として供え
続けました。顔の見えぬ息
子に愛情の全てをかけるこ
とが、自分自身の心の支え
になっていたのでしょう。
敗戦の日が過ぎ、外地から
の引き揚げが終了しても、
正式に広報を手にするまで
続け、はた目にも痛々しさ
を覚えたほどです。
私には遠い日の陰膳の記
憶がよみがえりました。、