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神戸新聞、オピニオン発言欄

!!終戦特集!! 8月14日投稿文
子供の頃の戦争体験談や暮らしぶり等を後世に伝える企画

タイトル ◆ひもじかった思いとともに◆
大谷 茂 78歳 (無職 姫路市)

 昭和21年、豊岡市日高町
の山あいの農家に生まれた
私は戦争を知りません。記
憶は6歳の頃からです。村
立幼稚園1期生。衣食住の
つらさが家族や地域に染み
ていました。衣は繕い物ば
かり。明かりはなく、川水
とまきで炊き物。わら屋根
で隙間だらけの部屋。
 食事は、空腹の虫を抑え
たい欲求のみ。主食の米は
供出制度のため、残された
分では足りず、大麦で補充
し、なおかさ上げのため芋
類を入れたご飯。副食はな
く「すきっぱらにまずい物
なし」が母の口癖でした。
 近くの山から切り取った
細竹を釣りざおに、ミミズを
餌に釣り上げた川魚を、ご
ちそうだと母は喜んでくれ
ました。直接戦争体験のな
い私には、戦後数年たった
頃からの記憶に残る日々の
ひもじかった思いが、終戦
の傷跡と感じます。そして
たくさんの自然からの恵み
があればこそ。人もまた自
然界の一部なのですねえ。