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神戸新聞、コラム正平調書き写し

「平和とは、日常の生活が続けられ
ること」と書くのは、世界各地の戦
場を取材してきた報道写真家の石川
文洋さんだ。2月、能登半島の被災
地を訪れた際の記事をこう結んでい
る。「(能登には)日常の生活がない、つ
まり平和がない」◆能登で地震が起きて2
カ月になる。場所によって違うのだろうが
発生1週間、1カ月、現在と被災地から届
く写真を見比べても、ほとんど変わりがな
い。日常の生活が戻る気配がない。どうし
たことか◆崩れた家もゆがんだ道路もその
ままのところが多い。きょうの朝刊23面の
記事では、現地を訪れた本紙記者が「2カ
月、ただ日が過ぎただけやった」という肉
声を伝える◆阪神・淡路から2カ月の頃は
つち音が響いていた。鉄道が少しずつ動き
出し、仮設店舗で商いが始まる。紙面では
こんな見出しも。「ボランティア、延べ1
00万人」◆あまりの多さに混乱もあった
ものの次第に現場で調整が進んだ。そして
いろんなアイデァが生まれる。足湯がそう
傾聴ボランティアがそう。片付けや炊き出
しだけでなく、ゆっくり話を聞くことが心
のケアに大事と気付かされた◆もっと人を
被災地へ。「能登はやさしや土までも」。
復旧、復興、何より心根のやさしい人たち
を「心災」から救うために。 2024・3・1