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神戸新聞、正平調書き写し

米国の心理学者が2008年に著し
た「だまされやすさの年代史」は、
「私たちがだまされる理由を考察し
た最初の本」と紹介される。その最
終章は「人は年を重ねて賢くなるに
つれてだまされにくくなる」と説く◆だが
その考察は今の日本を覆う現実とは異なる
ようだ。昨年、兵庫県内の特殊詐欺被害は
過去最多の1224件、被害総額はやく19億
9千万円(いずれも暫定値)に上った。被
害者の多くは高齢者だ◆ちなみに「だまさ
れやすさー」の著者自身も刊行と同時期に
巨額の投資詐欺被害に遭った。どんな知識
も経験も、手の込んだ虚構にいとも簡単に
すり抜けられてしまう◆手口は広く知れ渡
っているのに、被害は後を絶たない。常に
だまされる可能性があると認め、非通知の
番号には応答しない。常時留守番電話に設
定する、必ず誰かに相談するーなどの対応
を強くお勧めする◆警察は瀬戸際で送金を
食い止める「水際対策」を強化するが、詐
欺の手口は進化を続ける。今後はAI(人
工知能)を使ったフェイクの音声や画像に
よるなりすましにも警戒が必要だ◆特殊詐
欺がはびこる根底には、テクノロジーずく
めで複雑化した社会に生きる人間の孤独と
不安があると感じる。人間の弱さに付け込
む特殊詐欺との闘いは続く。 2024・2・25