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神戸新聞、正平調書き写し

梅の便りが届くようになった。本紙
の地域版を繰ると紅白の鮮やかな花
が目に入り、香るようだ。近づく春
は、別れと出会いの季節。学校で職
場で友との別れを惜しんでいる時期
ではないだろうか◆「友情」と口にすると
青臭い感じもするが、この二人の関係はこ
れ以外にどんな言葉が当てはまるのだろう
と思ってしまう。作家、陳舜臣さんと司馬
遼太郎さんである◆陳さんが1941年に
大阪外国語学校(現大阪大学外国語学部)
に、司馬さんは翌42年に入学している。卒
業後、それぞれ違う道を歩み始めたように
見えたが、引き付け合うように歴史を舞
台にした小説家へ◆「対談中国を考える」
(文春文庫)で陳さんは「司馬氏は善(よ)く歌
う者であり、私は彼の歌の勢いにのってい
ささか声を継ぐことができた・・・」と対談の
成果を語っていた◆神戸華僑歴史博物館で
開催中の特別展では、東京への転居を考え
る陳さんに、司馬さんが「神戸、関西から
離れるのは賛成できないなぁー」と語った
と紹介されている◆きょう18日は陳さんの
100回目の誕生日。天上で杯をくみ交わ
し、紫煙をくゆらせるー。そんな空想が膨
らむ。2人の命日は桃源忌、菜の花忌と呼
ばれる。色鮮やかな桃に、一面に広がる菜
の花。春が似合う二人である。2024・2・18