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正平調書き写し 2023年11月08日(水)

  先日、喫茶店でコーヒーを飲んでいると、70歳ぐらいの女性が腰をかけるなりぼやいた。「11月なのに暑いなぁ」。店主が「ほんまやな。でも寒いよりええやん」と返すと、その女性は「私、暑いの嫌いやねん。冬がええわ」◆なるほど四季が二季に近づけば、秋は話題にも上らなくなるのか。そういえば衣替えのタイミングも難しくなった。わが家の洋服ダンスは半袖の夏物が、まだ主役の座を譲っていない。秋物に出番はあるのやら◆広葉樹林の美しさについて、神戸新聞文芸の選者、わたなべじゅんこさんが書いていた。〈濃さの違う黄色。その間に差し色のような紅。そもそも日本の秋の山の風情はこうだったのでは〉。錦秋よ、早く来い◆紅葉の見頃は秋の気温が低いと早まり、高いと遅れる。今年は9月と11月上旬が異例の温かさだったから色づきはゆっくり進み、見頃は今月の後半―と日本気象協会は予測する。できれば紅葉は長く楽しみたい◆太宰治に「ア、秋」という短編がある。〈秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル〉。トンボは夏の間に育ち、柿も暑い盛りに実を結ぶ。作家の観察眼は季節の移ろいを見逃さない◆きょうは立冬。きのうの朝から急に冷え込んで、やっと秋らしくなってきた。冬モ秋ト同時ニヤッテ来ル。 2023・11・8  



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